基本手当の特例
★正当な理由による自己都合退職の場合の基本手当の特例
特定理由離職者Ⅱの制度を使う。
- 自己都合による退職の場合には、原則、離職日以前2年間に12ヶ月以上の雇用保険被保険者期間が必要です。
- しかし、自己都合退職でも、正当な理由による退職の場合には基本手当をもらうための条件が緩くなります。
- 以下の場合には正当な理由による自己都合退職となり、離職日以前1年間に6ヶ月以上の雇用保険被保険者期間で基本手当がもらえます。代表的な理由を下に記します。
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した人
- 労働者本人の「体力の衰え」や「疾病」・「心身上の障害」等に対し、会社側が配慮してくれて、労働者本人を心身に負担の少ない業務を遂行できる部署へ異動してくれたり、心身に負担の少ない業務をする支店へ異動してくれたりしたが、それでもその心身に負担の少ない業務を遂行することが不可能又は困難なケースが該当します。
- ※ただ単に体力の不足・心身の病気・心身の障害等だけでは「特定理由離職者」として認定してもらえるかどうかは微妙です。
- 妊娠・出産・育児等により離職し、基本手当受給期間延長の手続きを終了した人
- 父母の病気・怪我により介護をしなければならず離職した人。また、父母のどちらかが死亡したために今度は自分が父母のどちらかを介護しなければならず離職した人。
- 親族の疾病・負傷等によりその親族を常時介護しなければならならなくなり、やむを得ず離職した人。
- 我慢して単身赴任していたが、お金がかかり、経済的に厳しい等の理由で同居することとなり、退職せざるを得なくなった人。
- 例:夫が単身赴任していたが、妻も夫と同居するために、妻が退職せざるを得なくなったケース
- 結婚して配偶者(夫又は妻)と同居をするために、今まで働いていた職場を辞めなければならなくなった人
- 例:結婚して夫の実家に夫・夫の家族と同居するために、妻が退職せざるを得なくなったケース
- 育児のために利用する保育園が自宅からも職場からも遠いために離職せざるを得なくなった人。
- 育児のために親族に子供を預けることにしたが、その親族の家が自宅からも職場からも遠いために離職した人。
- 上司から遠方の支店等への転勤(出向)命令を受け、自分は反対したが認められず、やむなく離職した人。
- 配偶者が会社から転勤(出向)命令を受け自分も一緒について行き、配偶者と同居するために離職した人。
- ≒夫が転勤(出向)命令を受け妻が一緒について行くケース
- 配偶者が再就職をするために自分も一緒について行き、配偶者と同居するために離職した人。
- ≒夫の再就職先が遠方のために妻がやむなく現在の職場を辞めなければならなくなるケース
- 今まで勤めていた会社が移転することになり、その会社の移転先が自分の現在住んでいるところから遠いために、退職せざるを得なくなった人。
退職日以前1年間に、「11日以上労働/月」の月が6ヶ月間でOK
- 「1ヶ月に11日以上労働日」には有給休暇取得日(有給休暇消化日)も含まれます。
- 基本手当(失業手当)をもらうためには、原則としては、「退職日以前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間があること」が条件です。
- しかし、特定理由離職者Ⅱの場合には基本手当をもらうための条件が緩くなっています。
- 「退職日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があること」⇒これが特定理由離職者Ⅱの条件①です。
- 原則通り、「退職日以前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間があること」⇒これが特定理由離職者Ⅱの条件②です。
- 具体的に説明すると、例えば令和6年1月10日が退職日(離職日)の場合、「令和5年1月11日~令和6年1月10日」の1年間に、被保険者期間が6ヶ月以上あればOKです。
- 「退職日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があること」⇒これが特定理由離職者Ⅱの条件①です。
退職日以前1年間に「11日以上労働/月」の月が6ヶ月間の例
★退職日以前1年間に「6ヶ月~11ヶ月」の特定理由離職者Ⅱの場合
上の図の様に、退職日以前1年間に被保険者期間が「6ヶ月以上11ヶ月」の場合には基本手当の給付日数が増えます(増えないケースもあります=「退職時の年齢が30歳未満で雇用保険加入期間が1年未満のケース」と「退職時の年齢が30歳未満で雇用保険加入期間が1年以上5年未満のケース」)。しかも、給付制限(原則2ヶ月)無しです。
※雇用保険に加入していた期間自体が1年未満の場合には、基本手当の日数は「90日」となります。=自己都合退職者の「1年以上10年未満」の場合と同じ日数になります。
※退職日以前2年間に被保険者期間が「12か月~24ヶ月」の場合には基本手当の給付日数は自己都合退職の場合と同じ日数となります。しかし、病気・育児・家族の介護等のやむにやまれぬ理由で離職したので、給付制限(原則2ヶ月)は無くなります。
★退職日以前2年間に「12ヶ月~24ヶ月」の特定理由離職者Ⅱの場合
・自己都合退職の場合と同じ基本手当給付日数となります。つまり、退職日以前2年間に「12ヶ月」の被保険者期間があったために、逆に特定理由離職者としての恩恵を受けられないケースが出てくるのです。ただし、病気・育児・家族の介護等のやむにやまれぬ理由で離職したので、給付制限期間(原則2ヶ月)は無くなります。
・退職日以前1年間に「11ヶ月」の被保険者期間なら特定理由離職者として給付日数が増えたのに、退職日以前2年間に「12ヶ月」の被保険者期間があったために、一般被保険者(自己都合退職者・定年退職者等)と同じ基本手当給付日数になってしまうケースも出てきます。