傷病手当金をもらうための条件・もらえる期間、退職後も継続して受給する為のポイントを社会保険労務士がわかりやすく解説しました。

傷病手当金とは?

傷病手当金とは?

業務外の病気や怪我が原因で働けないときにもらえるお金

傷病手当金は会社が支払うものではなく、保険者が支払います。

  • 傷病手当金は、被保険者(社長も会社役員も含めた従業員)が保険者(健康保険組合、全国健康保険協会等)から支払われます。
     会社から被保険者(従業員)に支払われる給付金では、ありません。※健康保険・厚生年金保険では、社長も役員も「被保険者」になります。
  • 会社が従業員に対してお見舞金を支払うケースは、有ります。

労災の場合には、労災を使い、傷病手当金は原則もらえまえません。

  • 傷病手当金とは、業務外での病気や怪我で働けず、その結果、給料がもらえない場合に、健康保険からもらえるお金です。自分が加入している(加入していた)保険者(=健康保険協会又は健康保険組合)からもらえます。
    「病気や怪我で働けない期間は収入を保障しますから、安心して療養に専念してくださいね」という趣旨の、いわば、生活保障金のようなものです。もちろん、返済不要ですし、税金もかかりません。
  • 傷病手当金の額は?
     傷病手当金の1日分の額は、アバウトな表現をすると、給与1日分の額の約67%です。
  • 傷病手当金が貰える期間は?
     受給期間を合計して1年6か月です。
     例えば、「令和6年3月5日から令和6年3月31日まで(令和6年3月5日から令和6年3月31日までは欠勤無給とします。)」を申請した場合、「令和6年3月5日から令和6年3月7日まで=待期期間」となり、この3日間は傷病手当金はもらえません。」 ※「待期期間」が正しいです。「待機期間」は誤りです。
     しかし、「令和6年3月8日から令和6年3月31日まで(令和6年3月5日から令和6年3月31日までは”労務不能”)」は傷病手当金が受給できます。
     したがいまして、このケースでは受給開始日が令和6年3月8日となるので、傷病手当金は最長で令和7年9月7日まで受給可能です(令和6年4月1日以降も”労務不能状態”が続き傷病手当金不支給期間が無い場合)。
     ところが、一旦治癒したと思った傷病が再発した場合は、受給開始日から受給期間が1年6か月未満であれば、再度、傷病手当金を受給することが可能です。
    上のケースの場合だと、下の図のようになります。
    受給期間を通算して1年6か月がMAX
    ※「退職後の傷病手当金(健康保険法104条に規定する”資格喪失後の継続給付”)の条件をクリアーすれば、退職後期間も貰えます。

  • 労災の場合には、労災を使い、病院での治療費が「0円」(「療養補償給付」)となり、「休業補償給付」+「休業特別支給金」(≒給料1日分の60%+給料1日分の20パーセント)をもらうことになります。
    • やはり、労災の方が手厚い!!

どういう人が傷病手当金をもらえるのか?

サラリーマンやOLさんです。

条件をクリアーすれば代表取締役・取締役等の役員も、もらえます。

  • 健康保険に加入している被保険者本人が、いくつかの条件をクリアーすれば、傷病手当金はもらえます。
    • 傷病手当金を貰うためにには、「労務不能」の日が4日間必要です。そして、労務不能の日が3日連続し、労務不能4日目から傷病手当金が貰えます。
    • 在職期間の申請の場合は、給与の締日毎に区切って申請します。
    • 傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の医師の記入欄(「医師の意見書」と言います。医師の診断書ではありません。)には、「初診日以後の期間」について、「労務不能と認めた期間」・「症状の経過」等を記入してもらいます。
    • 一番シンプルなのは、下記のケースです。
      • 給与の締日が月末とします。病院には、令和6年2月29日、令和6年3月11日、令和6年3月25日、令和6年4月8日、令和6年4月22日に通院したとします。
         「令和6年3月11日から令和6年3月31日まで」会社を欠勤し、この21日間については欠勤無給だったケースでは、令和6年4月1日以降の通院日に下のように医師に記入してもらいます。
         「労務不能と認めた期間=令和6年3月11日から令和6年3月31日まで:21日間」
        ※傷病手当金は「過去の労務不能期間」を申請するので、医師には「過去の労務不能期間」を記入してもらいます。
  • 在職期間分の申請については、傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「事業主記入欄」に記入してもらう必要が有ります。
    • 傷病手当金は申請期間内に給与(賃金)が支払われた場合、その給与額(賃金額)の分だけ減額されるからです。典型的な例では、「申請期間内に有給休暇期間が含まれているケース」です。
    • 傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「被保険者記入欄」と「医師記入欄」が記入済みとなったら、未記入状態の「事業主記入欄」と一括してを会社へ送ります。そうすると、会社が「事業主記入欄」に記入し、「被保険者記入欄(記入済み)」・「医師記入欄(記入済み)」・「事業主記入欄(記入済み)」となった状態の傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)を保険者へ提出します(健康保険組合の場合は一般的に出勤簿コピー・賃金台帳コピーを添付しますが、全国健康保険協会の場合は出勤簿コピー・賃金台帳コピーは不要です)。

被扶養者(=ご家族)は原則、もらえません。

  • 被保険者本人の被扶養者(=ご家族)は、傷病手当金は原則もらえません。
    • ただし、一般被保険者の資格を喪失後の傷病手当金の継続受給については、被扶養者となった後でも、継続して受給できる場合があります。ただし、一般被保険者期間の標準報酬月額がかなり低い場合です。
       具体的には以下の条件をクリアーする場合です。
      「傷病手当金受給開始日の属する月以前12か月間の標準報酬月額の平均額」÷30×2/3≦3,611円(60歳未満の場合」
       ※60歳未満の場合は、傷病手当金1日分の額が3,611円以下であることが条件です。 
       ※退職日まで(資格喪失日の前日まで)に加入していた保険者での健康保険一般被保険者期間が12か月未満の場合は、下の2つのうち低い方の額を採用します。
      ❶「退職日まで(資格喪失日の前日まで)に加入していた保険者での健康保険一般被保険者期間の平均標準報酬月額
      ❷傷病手当金受給開始日の属する年度の前年度の9月30日に於けるその保険者内の被保険者の平均標準報酬月額


      「傷病手当金受給開始日の属する月以前12か月間の標準報酬月額の平均額」÷30×2/3<5,000円(60歳以上又は障害者の場合」
       ※60歳以上又は障害者の場合は、傷病手当金1日分の額が5,000円未満であることが条件です。
       ※退職日まで(資格喪失日の前日まで)に加入していた保険者での健康保険一般被保険者期間が12か月未満の場合は、下の2つのうち低い方の額を採用します。
      ❶「退職日まで(資格喪失日の前日まで)に加入していた保険者での健康保険一般被保険者期間の平均標準報酬月額
      ❷傷病手当金受給開始日の属する年度の前年度の9月30日に於けるその保険者内の被保険者の平均標準報酬月額

被扶養者は原則もらえません。

退職後の傷病手当金と任意継続被保険者制度は条件が異なります。

  • 退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は、任意継続被保険者には無い給付です。
    • しかし、任意継続被保険者の条件をクリアーし、且つ、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付」の条件もクリアーした場合は、任意継続被保険者となりながら退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)を受給することは可能です。
      • したがいまして、退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)の受給要件をクリアーした人が退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)を受給しながら、国民健康保険に加入するという選択肢もあります。
  • 任意継続被保険者の期間に発生した傷病に対しては、「退職後の傷病手当金(資格喪失後の継続給付)は支給されません。
    • しかし、一般被保険者の資格を喪失後の傷病手当金の継続給付は、任意継続被保険者となった後でも、続けることは可能です。
      • 資格喪失後の傷病手当金継続給付と退職後の医療保険は別ものとして考えてください。つまり、任意継続被保険者になるための条件と退職後も傷病手当金をもらうための条件とは、まったく異なります。
      • 任意継続被保険者となるためには、任意継続被保険者となるための条件をクリアーすればOKです。退職後の傷病手当金をもらうためには、退職後の傷病手当金を受給できるための条件をクリアーすればOKです。

任意継続被保険者と傷病手当金との関係

任意継続被保険者が傷病手当金をもらえるケースはこちらをクリック

退職後に国民健康保険に加入した場合

  • 退職後に国民健康保険に加入した場合でも、退職後の傷病手当金を受給するための条件(健康保険法104条の条件)をクリアーすれば、退職後に国民健康保険に加入していても、傷病手当金を受給することは可能です。

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