傷病手当金をもらうための条件・もらえる期間、退職後も継続して受給する為のポイントを社会保険労務士がわかりやすく解説しました。

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傷病手当金は下記の条件をクリアーした場合に、もらえます。

❶仕事以外のことが原因で、仕事を連続3日休み(待期期間)、更にその傷病(仕事以外のことが原因の傷病)により1日以上仕事を休んだ場合(最低4日以上仕事を休まねばなりません)。
 よって、社内のパワハラ・社内のセクハラ・職場での人間関係・社内でのイジメ・過剰な時間外労働等が原因の場合は、傷病手当金(健康保険)ではなく、労災を請求するのが原則です。
❷「労務不能であること」=「労働不能であること」
❸傷病手当金を受給した期間が1つの傷病について合計して1年6か月未満であること。
⇒同一傷病について、最長で通算して(合計して)1年6か月、傷病手当金がもらえます。
❹退職日まで給与・賃金・手当等が全額に近い額支払われているために傷病手当金が不支給(支給停止)になり、「在職期間分について傷病手当金をもらっていないケース」でも、「在職最後の4日間(退職日以前4日間)」が”労務不能”であり、退職後も”労務不能状態”が続いていれば退職後も退職後の傷病手当金の受給権(もらう権利)は発生します。
「退職後の傷病手当金」をもらうポイントは、「在職最後の傷病手当金申請期間が”労務不能かどうか?」です。⇒「最低限在職最後の4日間(最低限退職日以前4日間)」が”労務不能”であるか?です。=医師により傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)の「医師記入欄」に「”労務不能”の証明をしてもらえるか?」です。 

  • 「退職日まで有給休暇等により給与が全額支払われた」という事実だけで「退職後の傷病手当金」がもらえなくなるわけではないです。つまり、退職日まで給与・賃金・手当等が支払われても支払われなくても、「在職最後の傷病手当金申請期間(最低限在職最後の4日間(最低限退職日以前4日間)」が”労務不能”であり、退職後も”労務不能状態”が続いていれば、「退職後の傷病手当金」の受給権(もらう権利)は発生します。
  • 即ち、退職日まで有給休暇等により給与が全額支払われた」という事実だけにより「退職後の傷病手当金」を諦める必要は無いです。
  • 「一般被保険者資格喪失後の傷病手当金」をもらう場合も同様です。「一般被保険者資格喪失日の前日まで有給休暇等により給与が全額支払われた」という事実だけで「一般被保険者資格喪失日以降の傷病手当金」がもらえなくなるわけではないです。
     一般被保険者資格喪失日の前日まで給与・賃金・手当等が支払われても支払われなくても、「一般被保険者資格喪失日の前日までの傷病手当金申請期間(最低限一般被保険者資格喪失日の前日までの4日間」が”労務不能”であり、一般被保険者資格喪失日以降も”労務不能状態”が続いていれば、「一般被保険者資格喪失日以降の傷病手当金」の受給権(もらう権利)は発生します。

❺その他、総合的に保険者(全国健康保険協会、健康保険組合等)が判断して、傷病手当金を「支給するか?」・「不支給とするか?」を決定します。
 ●例えば、次のようなケースは、支給になるかどうか?は分かりません。
会社を休んだ期間が離れているケース

社会的治癒について

●例えば、「3年6か月前から2年前まで」、「うつ病」で傷病手当金を「1年6か月間」受給していた。しかし、今回、また「うつ病」が再発して、会社を休んでいる。この場合も、総合的に保険者(全国健康保険協会、健康保険組合等)が判断して、傷病手当金を「支給するか?」・「不支給とするか?」を決定します。
 ポイントは、前回(3年6か月前から2年前まで)傷病手当金をもらってから2年が経過しているが、「社会的治癒」が認められるか?です。「社会的治癒」が認められれば、傷病手当金はもらえる可能性は有ります。

  • 「社会的治癒」とは?
    • 「社会的治癒」とは、一旦症状が軽快した後に以前と同じ傷病が再発しても、「問題無く社会生活を送っていた期間が一定期間以上有るのであれば、以前の傷病と今回の傷病は別の傷病である」とする考え方です。
       つまり、「以前患っていた病気が軽快(又は治癒)してから相当の期間について問題無く日常生活を送っているのだから、前の病気と今回の病気は別の病気として扱いましょう」ということです。
    • しかし、「一定期間(相当期間)社会生活を問題無く送っていた期間」が、どれくらいの長さか?については法律に規定されてはいません。即ち、保険者(全国健康保険協会、健康保険組合等)の判断になります。

会社とは穏便に対応して退職したい。

会社とは穏便に退職して退職後は傷病手当金をもらいたい。

  • 会社に対して言いたいことは山ほどあるが、会社と争うと疲れるし、病状も悪化するかもしれない。
    • このような場合は、会社に対してして言いたいことを我慢して、「退職後の傷病手当金をもらいながら療養に専念すること」も1つの選択肢です。
  • 休職期間が長く、会社から「退職勧奨」を受けている。
     「・・君、君は●ヶ月間仕事を休んでいるのだよ。そろそろ身の振り方を考えても良い頃合いではないですか?」のような内容の言葉を上司から言われたケースです。
    • このような場合も、「退職勧奨」を受け入れて、「退職後の傷病手当金をもらいながら療養に専念すること」も1つの選択肢です。
       しかし、「退職勧奨」は受け入れる必要は無いです。そのまま会社に在職することを希望する場合は、その旨を会社に伝えましょう!

会社の対応には絶対に我慢できない場合。

この場合は、傷病手当金(健康保険)ではなく、労災を請求します。

  • 例えば、次のようなケースです。
    • 社内でパワハラ・セクハラを受けてメンタル系傷病になってしまった。
    • 社内でセクハラを受けてメンタル系傷病になってしまった。
    • 職場の人間関係で悩んでいてそれを上司に訴えたが一切対応してもらえずに、結果、メンタル系傷病になってしまった。
    • 残業時間や早朝出勤等の時間外労働が非常に多く、心身ともに疲れてしまい、メンタル系傷病になってしまった。

業務・職場に関係することが原因で傷病になってしまった場合は、労災を請求します。

業務外のことが原因で傷病になってしまった場合は、傷病手当金(健康保険)を請求します。


このまま退職しても、退職後も傷病手当金はもらえるの?

「健康保険一般被保険者期間が、退職日までに連続1年以上有ること」が条件です。

退職日までに健康保険一般被保険者期間 が「連続1年以上」有ることが条件です。

 会社(保険者)が異なっていても、「退職日までに健康保険一般被保険者期間が「連続1年以上」有ればOKです。
 下に、例を図解します。
退職日までに健康保険一般被保険者期間が連続1年以上の例


退職日までに健康保険一般被保険者期間が連続1年以上の例



健康保険一般被保険者期間を通算して10年以上有っても、退職日までに健康保険一般被保険者期間 が「連続1年以上」無い場合は「退職後(一般被保険者喪失後)の傷病手当金」は、もらえません。

 もらえない例を下に図解します。
退職日までに健康保険一般被保険者期間が連続1年以上無い例




退職日までに健康保険一般被保険者期間が連続1年以上無い例



在職中は傷病手当金の申請手続きを一切していなくても、退職後に初めて傷病手当金を申請&受給は可能です。

  • ただし、退職の仕方を誤ると、退職後の傷病手当金は一切もらえなくなります。ご注意ください。
    • 傷病手当金の時効はその日毎に2年間ですので、在職中に申請していなくても、過去2年以内の分であれば申請は可能です。
      • 健康保険法第193条: 保険料等を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、二年を経過したときは、時効によって消滅する。
  • 在職最後の期間は、退職後に傷病手当金申請手続きを行います。
    在職最後の期間は、退職後でなければ傷病手当金の申請手続きはできません。
    • 傷病手当金は、「過去の労務不能期間」を申請手続きしますので、「在職最後の期間は、退職後でなければ傷病手当金の申請手続きはできません。
       つまり、「在職最後の期間」については、退職後に「退職日まで在職していた会社」を通して手続きをするのが原則です。
       理由は、「在職最後の給与計算期間」のうちの「傷病手当金申請期間」について「賃金・手当等がいくら支払われたか?」を会社により「事業主記入欄」に記入してもらわねばならないからです。
       「傷病手当金の額<傷病手当金申請期間の賃金・手当等の額」の場合には、傷病手当金は不支給(今回の傷病手当金については支給停止)となります。しかし、受給権(もらう権利)は獲得できるので、傷病手当金が今後一切もらえないわけではないです。
      「傷病手当金の額>傷病手当金申請期間の賃金・手当等の額」の場合には、「傷病手当金の額-傷病手当金申請期間の賃金・手当等の額」が傷病手当金として支払われます。このケースは、非常に少ないです。
    • 全国健康保険協会に加入している場合(又は退職日まで全国健康保険協会に加入していた場合)は、「事業主記入欄」を会社に記入してもらい、それを自宅まで郵送してもらい、「被保険者記入欄」を自分で記入して「療養担当者記入欄」を医師に記入してもらえば、「被保険者記入欄(記入済み)」・「事業主記入欄(記入済み)」・「療養担当者記入欄(記入済み)」の状態になるので、自分自身で全国健康保険協会に提出することが出来ます。全国健康協会の場合は、出勤簿(コピー)・賃金台帳(コピー)は不要です。
       しかし、健康保険組合の場合は、在職期間については、出勤簿(コピー))・賃金台帳(コピー)の提出を要求するのが一般的なので、健康保険組合に加入している場合(又は退職日まで健康保険組合に加入していた場合)は、「在職期間分の傷病手当金申請」については会社を通して傷病手当金の申請手続きをせざるを得ません。
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  • 強く注意すべきこと。
    • 退職日を含んだ在職最後の4日間(有給休暇でも公休日でも欠勤無給でもOK)は出勤しないこと(在宅ワークもリモートワークもしないこと)です。「出勤、在宅ワーク、リモートワーク=労務可能=傷病手当金の対象外」となりますので。
      • 例:令和6年9月30日が退職日の場合
          令和6年9月27日から令和6年9月30日までの4日間は出勤しないこと(在宅ワークもリモートワークもしないこと)です。在職最後の4日間が全て有給休暇でも全く問題無いです。もちろん、在職最後の4日間が欠勤でも公休日でも問題無いです。ポイントは「在職最後の4日間が労務不能であること」です。「出勤、在宅ワーク、リモートワーク=労務可能=傷病手当金の対象外」となりますので。
    • また、通院(又は入院)間隔があまり長くなると医師が「医師記入欄(療養担当者記入欄」に記入してくれないので、定期的に通院しましょう!
    • 例えば、「在職最後の4日間」しか会社を休んでいない場合(欠勤でも有給休暇でも公休日でもOK)は、下の図の様に通院すると良いです。
      在職最後の4日間しか休んでいない場合
    • 上の図のケースの場合、傷病手当金申請期間である「令和6年9月27日から令和6年9月30日(退職日)まで」の4日間のうち、最低1日は通院(又は入院)して下さい。
    • もちろん、傷病手当金申請期間である「令和6年9月27日から令和6年9月30日(退職日)まで」の4日間の前後の期間に通院(又は入院)していないと、医師は記入してくれません。上の図のケースだと、「令和6年9月17日の通院日」と「令和6年10月15日の通院日」です。

会社在籍期間(退職日を含んだ期間)から申請します。

以下の2通りのケースに分かれます。

在職中は会社から給与・手当等が支払われていたために傷病手当金を申請していなかったケース
傷病を患って会社を欠勤(無休)してから退職日までの期間が短いケース

退職日までの在職期間分を1回も申請していない場合には、上記の2ケースのいずれの場合にも、在職最後の期間分を「第1回目」として申請することが必要となります。在職期間分について1度も傷病手当金を申請していない人が、退職後に退職後期間分のみを申請しても傷病手当金はもらえません。
 在職最後の期間分を退職後に申請することは可能です(問題ありません)。
 在職最後の期間分については、在職中に申請する必要はありません。というか、在職最後の期間については、退職後に申請するしか方法がありません。ただし、退職してから長期間経過してしまうと、医師が「労務不能」の証明を書いてくれない可能性が有りますので、退職日から3ヶ月を経過する頃までには「第1回目」の傷病手当金申請をしておくことをおすすめします。

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  • 退職日までの期間で労務不能により欠勤している期間(又は有給休暇期間)が含まれている場合には、会社を経由して在職中に自分の加入していた保険者(健康保険協会又は健康保険組合)に「傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)」を提出します。※郵送でもOK.
  • 段取りとしては、
  • まず、会社(又は健康保険協会・健康保険組合)から「傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)」をもらう。又はパソコンから傷病手当金支給申請書(傷病手当金請求書)をダウンロードする。
  • 病院で医師に「療養担当者が意見を記入するところ」の欄を記入してもらう。
  • 申請者本人記入欄に記入する。
  • 会社に提出(郵送)し、会社記入欄に記入してもらい、あとは会社の担当者に手続きをしてもらいます。


傷病手当金の受給期間が満了した後は?

傷病手当金を1年6ヶ月もらったが、傷病が治癒しない場合。

障害年金を請求します。

障害年金請求手続きの御依頼はこちらです。

  • 傷病手当金を1年6ヶ月分受給したが、それでも、傷病が治癒も軽快もせず、働くことが困難な場合は、障害年金を請求します。
    • 認定日請求について
      • 「初診日から1年6か月~初診日から1年9か月経過した時点」での傷病の状態(障害の状態)が障害等級に該当していれば障害年金がもらえます。
      • 初診日に国民年金に加入していた場合は、障害等級1級又は障害等級2級に該当すれば、障害認定日の翌月分から障害基礎年金がもらえます。
      • 初診日に厚生年金に加入していた場合(20歳以上65歳未満の場合)は、初診日において「国民年金+厚生年金」のダブル加入状態なので、「初診日から1年6か月~初診日から1年9か月経過した時点」での傷病の状態(障害の状態)が障害等級に該当していれば障害年金がもらえます。

        障害等級が1級又は2級の場合は、「障害基礎年金(国民年金の障害年金)+障害厚生年金(厚生年金の障害年金)です。
      • 障害基礎年金(国民年金の障害年金)には、1級と2級しかないです。
         障害厚生年金(厚生年金の障害年金)には、1級・2級・3級が有ります。
      • 障害等級が3級の場合は、「障害厚生年金」だけとなります。
         しかし、障害厚生年金3級には「596,300円/年額」の最低保障額が有ります。
  • 認定日請求は、65歳を過ぎても、初診日が65歳の誕生日の2日以上前にあれば手続き出来ます。しかし、障害年金の時効は5年なので、過去5年よりも前の期間についてはもらえません。

    • 事後重症請求について(65歳の誕生日の2日前までがリミット)
  • 「初診日から1年6か月~初診日から1年9か月経過した時点」での傷病の状態(障害の状態)が障害等級に該当しなかったが、その後症状が悪化して障害等級に該当するようになった場合は事後重症請求関係の書類を日本年金機構(年金事務所)に提出した月の翌月分から障害基礎年金がもらえます。
  • 初診日に国民年金に加入していた場合は、障害等級1級又は障害等級2級に該当すれば、事後重症請求関係の書類を日本年金機構(年金事務所)に提出した月の翌月分から障害基礎年金がもらえます。
  • したがいまして、事後重症請求の場合は、事後重症請求関係の書類を日本年金機構(年金事務所)に提出するのが遅れれば遅れるほど障害年金をもらい始める月が遅くなります。ご注意ください。
  • 障害基礎年金(国民年金の障害年金)には、1級と2級しかないです。
  • 障害厚生年金(厚生年金の障害年金)には、1級・2級・3級が有ります。
    初診日に厚生年金に加入していた場合(20歳以上65歳未満の場合)は、初診日において「国民年金+厚生年金」のダブル加入状態なので、事後重症請求関係の書類を日本年金機構(年金事務所)に提出した月の翌月分から(障害等級に該当していれば)障害年金がもらえます。

    障害等級が1級又は2級の場合は、「障害基礎年金(国民年金の障害年金)+障害厚生年金(厚生年金の障害年金)です。
  • 障害基礎年金(国民年金の障害年金)には、1級と2級しかないです。
     障害厚生年金(厚生年金の障害年金)には、1級・2級・3級が有ります。
  • 障害等級が3級の場合は、「障害厚生年金」だけとなります。
     しかし、障害厚生年金3級には「596,300円/年額」の最低保障額が有ります。
  • 事後重症請求は、65歳の誕生日の2日前までに事後重症請求関係の書類を日本年金機構(年金事務所)に提出しないと、もらえなくなります。

障害年金請求手続きの御依頼はこちらです。

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